はじめに
「光の情景画家」と称される笹倉鉄平(ささくら てっぺい)。ヨーロッパの美しい街並みに幻想的な光を織り交ぜた作品で知られています。
1990年の画家デビュー以来、220作品を超える版画作品を発表し、現在も精力的に創作活動を続ける現役画家です。今回は、笹倉鉄平の生涯と作品の魅力、そして市場での価値について詳しく解説いたします。
笹倉鉄平作品をお持ちの方、売却をご検討の方はぜひ最後までお読みください。

笹倉鉄平とは?
1954年兵庫県生まれ – 武蔵野美術大学からの歩み
笹倉鉄平は1954年、兵庫県の織物業を営む家庭に生まれました。幼少期より家業の染色や図案画に興味を抱き、15歳頃から本格的に絵画・デザインの基礎を学び始めます。美術への情熱を胸に武蔵野美術大学商業デザイン科に進学し、1977年に卒業しました。
大学卒業後、笹倉はグラフィックデザイナーを経て、広告制作会社専属のイラストレーターとなります。1980年にはフリーランスとして独立し、広告や出版の仕事を手がけるようになりました。この時期の代表的な仕事として、森永製菓のパッケージイラストを10年にわたり200点以上制作したことが挙げられます。
商業イラストレーターとして着実にキャリアを積む中、1987年からは毎日新聞カラー別刷り版の裏表紙に「Romantic Gallery」(ドイツの街々)、1988年には「ロマン色の街角」(フランスの街々)シリーズを連載。これらの連載は、後の画家活動の基盤となる重要な経験でした。

グラフィックデザイナーが描く光の世界
笹倉鉄平の作品がこれほど多くの人を魅了するのはなぜでしょうか。その秘密は、グラフィックデザイナーとしての経験が生み出した独特の表現にあります。商業デザインで培った色彩感覚と構図の技術が、彼の絵画作品に他にはない魅力を与えているのです。
中でも驚かされるのが、笹倉の「光の表現」です。不透明な画材を使いながらも、まるで光が透けて見えるような透明感を表現する技術は、まさに職人技といえるでしょう。また、商業イラストで培った「親しみやすさ」も笹倉作品の大きな魅力。美術に詳しくない人でも自然に引き込まれる温かみがあります。
国際的評価 – 記念すべき海外個展の成功
1990年の画家デビュー以降、笹倉鉄平は国内外で精力的に個展を開催し続けています。特に国際的な評価を決定づけたのが、重要な記念事業として開催された海外での個展成功です。
2004年にはイタリア・マルケ州レカナーティ市主催による個展、2005年にはフィレンツェ・京都姉妹都市締結40周年記念としてフィレンツェ市主催によるパルテ・グエルファ宮での個展を開催しました。2006年には北京の国立中国美術館にて日中友好を目的とした二人展、2008年には「日仏交流150周年」および「京都市・パリ市姉妹都市盟約締結50周年」を記念した個展をパリと京都で同時開催するなど、文化交流の一翼を担ってきました。
2015年には「京都・フィレンツェ姉妹都市提携50周年記念事業」の一環として、両市後援のもと高台寺(京都)とサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局(フィレンツェ)での個展を成功させています。
審美眼の厳しい国際的な観客からも高い評価を受けた笹倉の作品は、普遍的な美しさを持った芸術作品として国際的に認められており、この評価は作品の市場価値の安定にも大きく影響しています。

笹倉鉄平の作品の魅力や特徴
笹倉鉄平の作品紹介 – カダケス、オンフルール、サントロペ、カフェベラノッテ
笹倉鉄平の作品の中から、特徴的な4点をご紹介します:
- カダケス(1991年):画家デビュー作として記念すべき作品
- オンフルール(2005年):カレンダーの表紙を飾った知名度の高い作品
- サントロペ:地中海の美しい港町を描いた作品
- カフェベラノッテ:夜のカフェの温かな光を表現した作品
これらの作品に共通するのは、いずれもヨーロッパの美しい街並みを舞台にしていることです。「カダケス」は笹倉鉄平が画家として世に出るきっかけとなったデビュー作として、特別な意味を持つ作品です。
「オンフルール」は印象派の画家たちにも愛されたフランスの港町を描いた作品で、カレンダーの表紙に採用されたことで多くの人に親しまれています。作品の中に描かれた水面に映る光の表現は、笹倉の技法の特徴をよく示しています。
これらの作品は、笹倉鉄平の作風や技法を理解するうえで参考になる作品群といえるでしょう。

港町シリーズの魅力 – 水面に映る光の表現
笹倉鉄平の作品の中でも、港町を描いたシリーズは特徴的な魅力を持っています。地中海沿岸の美しい街並みを題材にしたこれらの作品が人々を魅了する理由の一つは、笹倉独特の「水面に映る光の表現」にあります。
静かな港の水面に映る建物の影、夕日に照らされて輝く波紋、街灯が水面に落とす光の帯。これらの表現は実際の風景以上に美しく幻想的で、一度見たら忘れられない印象を残します。あなたも港町の絵を見ると、なぜか心が躍ったり、遠い旅への憧れを感じたりしませんか?
朝の清々しい光から夜の神秘的な照明まで、時間帯によって全く異なる表情を見せる港町の様子は、笹倉の卓越した観察眼と表現力の証。こうした技術的な完成度の高さも、港町シリーズの魅力の一つなのです。

制作年代による市場評価の違い – 1990年代初期作品の希少性
笹倉鉄平の作品を語る上で見逃せないのが、制作年代による評価の違いです。特に1990年代初期の作品は、画家としてのキャリアの出発点であると同時に、現在では多くのコレクターが探し求める、大変価値のある作品として知られています。
なぜ1990年代初期の作品がこれほど高く評価されるのでしょうか。まず、この時期は笹倉が画家として本格的にスタートを切った記念すべき時期。デビュー作「カダケス」をはじめとする作品には、後の円熟した作風とは一味違う初々しさと力強さが宿っています。
また、この時期の作品は制作数が比較的少なく希少性が高いことに加え、グラフィックデザイナーから画家への転身期に生まれた作品群として、商業美術と純粋美術の境界を越えた独特の魅力を持っています。美術史的な観点からも貴重な作品として位置づけられているんですね。
技法による価値の違い – シルクスクリーンが高評価を受ける理由
笹倉鉄平の作品は、主にシルクスクリーン(※)とジークレー(※)という二つの技法で制作されています。同じ作品でも技法によって市場での評価が異なることは、コレクターや買取を検討される方にとって重要な知識です。
一般的に、シルクスクリーン作品の方がより高い評価を受ける傾向にあります。シルクスクリーンは版画制作における伝統的な技法で、制作過程により多くの手間と技術が必要とされ、色彩の再現性においても優れています。
一方、ジークレーは比較的新しいデジタル印刷技術で、色彩の再現性は非常に高いものの、シルクスクリーンとは異なる特徴を持ちます。どちらも笹倉鉄平自身が監修した正規の作品として、多くのファンに愛され続けています。
※シルクスクリーン:絹などの布を張った版を使用する版画技法の一種
※ジークレー:高品質なインクジェット技術を用いたデジタル版画技法
笹倉鉄平作品の買取相場・実績
※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。
オンフルール

カフェベラノッテ

スター・アトラス南星図

当社では、これまでに笹倉鉄平作品を多数取り扱っており、豊富な査定・買取実績がございます。作品の評価や真贋のご相談など、お気軽にご相談ください。
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笹倉鉄平の作品を高値で売却するポイント
来歴や付帯品・保証書
来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。
贋作について
ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。
ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。
落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。
油彩画(額)
状態を良好に保つ為の保管方法
油絵は主に布を張ったキャンバスと言われるものに描かれています。他にも板に直接描かれた作品もあります。油絵の具は乾燥に弱く、色によってはヒビ割れ目立つ作品が見受けられます。また、湿気によりカビなどが付着しやすく、カビが根深い場合は修復困難となってしまいます。高温多湿を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。
修復方法
油彩画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります。
版画
共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)
版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。
主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。
リトグラフ
石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。
シルクスクリーン
枠にメッシュ素材(シルクやナイロン)の布を張り、油性描画剤で直接絵を描いたり、マスキングをし絵の具の通る部分通らない部分を作った版を紙に乗せ写しとる技法です。絵画以外にも写真や被服等にも応用されています。
笹倉鉄平についての補足情報
220作品を超える版画制作 – デビューから現在まで
笹倉鉄平は1990年の画家デビュー以来、220作品を超える版画作品を制作し続けています。1991年にシルクスクリーンによる版画作品の発表を開始して以来、継続的に新作を発表し、その作品群は年代ごとに異なる特徴と魅力を示しています。
作品の記録については、これまでに3度のカタログレゾネ(版画全集)が出版されており、2002年「笹倉鉄平全版画集1991-2002」、2013年「笹倉鉄平全版画集2002-2013」、そして2023年には最新の「笹倉鉄平 版画全集2013-2023」が刊行されています。これらの全集は、作品の変遷を体系的に理解するうえで貴重な資料となっています。
初期の港町を中心とした地中海沿岸の風景から、近年のより多様化した表現まで、笹倉の創作活動の軌跡は多くのファンやコレクターにとって興味深い変遷を見せています。
重要な個展実績 – 美術館での評価
笹倉鉄平の画家としての地位を決定づけた重要な個展として、1998年「大丸ミュージアム・東京」での初の美術館個展が挙げられます。この個展では、イラストレーター時代からの作品を含むそれまでの活動を集大成した展示が行われ、画家としての本格的な評価を獲得しました。
そして2021年には、東京「上野の森美術館」にて画業30周年記念個展が開催されました。この個展は、笹倉鉄平の30年間の画業を総括する記念すべき展覧会として、多くの来場者を集め高い評価を受けました。
これらの美術館での個展実績は、百貨店での個展とは異なる格式と評価を示すものであり、笹倉作品の芸術的価値を証明する重要な指標となっています。
継続的な展示活動 – 現役画家としての作品価値維持
笹倉鉄平は現在も東京を拠点に、ヨーロッパ各地を訪問しながら精力的に制作活動を続けています。1991年以降、国内有名百貨店等において100回を超す個展を開催し、継続的な展示活動を行っています。
2000年には版元業務を中心とした「株式会社アートテラス」を設立し、2022年には「株式会社 笹倉鉄平オフィス」へ名称変更するなど、作品の制作から販売まで一貫した体制を整えています。こうした継続的な活動は、作品の市場価値維持に重要な役割を果たしており、作品の真正性を保証する体制も整っているため、コレクターにとって安心して作品を購入できる環境となっています。
現役画家として活動を続けることで、笹倉鉄平作品全体の信頼性と市場での安定性が保たれているのです。
もしお手元に笹倉鉄平の作品をお持ちの方は、その価値を正確に知るためにも、専門の鑑定士による査定を受けてみてはいかがでしょうか。
まとめ
グラフィックデザイナーから「光の情景画家」へと転身を遂げた笹倉鉄平。独特の光の表現とヨーロッパの街並みで多くの人々を魅了し続けています。
港町を題材にした作品や1990年代初期の作品、シルクスクリーン技法による作品は特に市場でも注目されており、現役画家として活動を続ける笹倉の今後にも期待が集まっています。
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