実家の「黒い置物」が八木一夫かも?作品の価値と買取相場を徹底解説

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はじめに

戦後日本の陶芸界に革命を起こし、「走泥社(そうでいしゃ)」の創設者として世界的にその名を知られる八木一夫(やぎ かずお)

もし、あなたのご自宅や蔵に、真っ黒で不思議な形をした置物や、独特の幾何学模様が描かれた壺、「一夫」とサインが入った木箱などが眠っているのであれば、それは驚くべき価値を秘めているかもしれません。

八木一夫は、陶芸を「使うための器」から「鑑賞するための造形芸術(オブジェ)」へと昇華させたパイオニアです。そのため、彼の作品は数百万円で取引される美術館級のオブジェから、数万円で取引される日常使いの器まで、市場価値が大きく二極化しているのが特徴です。

本記事では、八木一夫の作家としての生涯を振り返りつつ、買取相場や実績、作品の価値について専門的な視点から解説します。売却をご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。

八木一夫とは?

陶芸の枠を超えた唯一無二の天才 八木一夫

走泥社の結成と前衛陶芸への道

1918年(大正7年)、京都の陶芸家・八木一艸(いっそう)の長男として生まれた八木一夫。彼は当初、陶芸よりも彫刻や音楽に強い関心を持っていました。父から「造形という肉体、根底がしっかりしていなければ何も始まらない」という教えを受け、京都市立美術工芸学校では彫刻科で学びました。

この「彫刻的な視点」こそが、後の彼の作風を決定づけます。1948年、鈴木治や山田光らと共に結成した「走泥社(そうでいしゃ)」は、陶芸界に衝撃を与えました。

「走泥社」という名前には、「泥(土)の中を進み、土と徹底的に向き合う」といったニュアンスが込められており、彼らが目指したのは伝統的な「用の美(使い勝手の良さ)」からの脱却でした。

彼らは「口(くち)」を閉じることで器としての機能を否定し、土を純粋な表現媒体として扱う「オブジェ焼」という新しいジャンルを切り開きました。

「ザムザ氏の散歩」が与えた衝撃

陶芸の枠を超えた唯一無二の天才 八木一夫
ザムザ氏の散歩

八木一夫を語る上で欠かせないのが、1954年に発表された代表作《ザムザ氏の散歩》です。 フランツ・カフカの小説『変身』の主人公(巨大な虫(害虫)に変身してしまった男)をモチーフにしたこの作品は、ロクロで作られた円筒状のパーツを切断し、組み合わせることで作られました。

本来、壺や茶碗を作るための道具であるロクロを使って、昆虫のような奇妙な立体作品を生み出したこの行為は、当時「カフカを焼いた」と評され、日本陶芸史における記念碑的な出来事となりました。この作品以降、日本の陶芸は「実用」の呪縛から解き放たれ、現代アートとしての地位を確立していくことになります。

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八木一夫の作品の魅力や特徴

漆黒の美学「黒陶」と「皺寄せ手」

八木一夫の作品の中で、現在市場評価が高いのが「黒陶(こくとう)」と呼ばれるシリーズです。釉薬(ゆうやく)を掛けず、低温焼成で煙を吸わせることで土自体を黒く染めるこの技法は、まるで金属や石のような重厚な質感を持ちます。

さらに、薄く伸ばした土の板を指でつまみ上げ、無数のひだやシワを作り出す「皺寄せ手(しわよせて)」という技法も彼の大きな特徴です。これらは単なる装飾ではなく、土という素材が持つ「皮膚感覚」や生命力を表現しており、見る者に強烈な印象を与えます。

※釉薬:陶磁器の表面に施すガラス質の層のこと。装飾効果や防水性を高めるために用いられる。

「オブジェ焼」と実用的な器の二面性

陶芸の枠を超えた唯一無二の天才 八木一夫
白い箱 OPEN OPEN

八木一夫の作家としての面白さは、前衛的なオブジェ作家でありながら、生活のために多くの「実用的な器」も制作していた点にあります。

  • オブジェ作品: ザムザ氏の散歩シリーズや黒陶作品など。「用途」を持たず、純粋に鑑賞するために作られたもの。
  • 実用作品: 湯呑、茶碗、花瓶、酒器など。独特の模様(千点文など)やサインが入っており、実際に使うことができるもの。

市場においては、この「オブジェ」か「器」かによって、査定額の桁が変わることも珍しくありません。しかし、実用作品であっても、彼の美意識が凝縮された小品はコレクターから根強い人気があり、安定した相場を維持しています。

八木一夫作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、共箱の有無、制作年代等により変動いたします。

信楽面取瓶

信楽面取瓶
買取実績価格:18万円

欧詩文扁壷

欧詩文扁壷
過去買取実績作品

志野湯呑

志野湯呑
過去買取実績作品

八木一夫の作品を高値で売却するポイント

「共箱」の有無とサインの確認

陶芸作品の査定において、最も重要なのが「共箱(ともばこ)」の存在です。共箱とは、作家本人が作品名を書き、サインと落款(ハンコ)を押した木箱のことです。 八木一夫のサインは、「一夫」と彫られたものや、「八・木・一」の文字をデザイン化したユニークなものなど、年代によってバリエーションがあります。

共箱は作品の「保証書」のような役割を果たすため、箱の有無だけで査定額が数倍変わることもあります。もし箱が見当たらない場合でも、作品本体の底などに彫銘(サイン)があれば査定は可能ですので、諦めずにご相談ください。

作品の状態(コンディション)

特に黒陶作品は、釉薬を掛けない低温焼成のため、一般的な高温焼成の器に比べると衝撃や擦り傷に弱い傾向があります。欠けや割れ、修復歴(共直し)がないかは重要なポイントです。

一方で、制作過程で生じた自然な窯変や、土のひび割れ表現などは「景色」として評価される場合もあります。ご自身で判断せず、専門家の目による確認をおすすめします。

「オブジェ」としての希少性

前述の通り、八木一夫作品の中で最も高値がつくのは「用途のないオブジェ」です。「花瓶として使うには口が小さすぎる」「置物にしては不思議な形をしている」といった作品こそ、実は高額査定の対象となる可能性があります。

八木一夫についての補足情報

実は「札幌オリンピック」のメダルもデザイン

出典:Wikipedia

前衛的なオブジェ作家として知られる八木一夫ですが、実は1972年に開催された札幌冬季オリンピックの入賞メダル(表側)のデザインも手掛けています。

トゲトゲとした前衛作品とは打って変わり、日本の美意識を感じさせる流麗なレリーフは、彼の造形力の幅広さを物語っています。このように国家的なプロジェクトに起用されたことからも、当時からいかに重要な作家として評価されていたかが分かります。

息子の八木明との違い

八木一夫の長男、八木明(やぎ あきら)も著名な陶芸家ですが、作風は父とは対照的です。父・一夫が土着的で力強い「黒陶」や「信楽」を多用したのに対し、明氏は洗練された幾何学的なフォルムと、透き通るような「青白磁(せいはくじ)」を得意としています。親子で全く異なる世界観を持っていますが、両者とも買取市場では非常に人気のある作家です。

贋作と鑑定について

八木一夫は人気作家であるため、残念ながら市場には模倣品や贋作も存在します。特にサインを似せただけの粗悪なものから、当時の作風を精巧に模した物まで様々です。

真贋の判断については、専門的な知識や経験が不可欠です。ご自身で判断せず、多くの作品知識と市場データを持つ専門業者に相談し、真贋の見極めや適正な価格提示を受けることをおすすめします。

まとめ

「器」という概念を破壊し、土による純粋な造形美を追求した八木一夫。 彼の作品は、その革新性ゆえに現代アートとしての評価が高まり続けており、特に代表的な「黒陶」オブジェは世界中のコレクターが探し求めています。

一方で、彼が生活の中で愛した実用的な器たちも、使い込むほどに味わいが増す「用の美」とはまた違った、作家の息遣いを感じさせる名品として愛され続けています。

もしお手元に八木一夫の作品、あるいは「八木一夫かもしれない」と思われる作品をお持ちでしたら、その真の価値を知るために、ぜひ当社の専門査定をご利用ください。

当社では、専門の査定士が、お客様の大切な作品の価値を的確に評価いたします。銘のない作品や、ご家族などによって箱書きがされた「識箱」の作品であっても、豊富な知識とデータに基づき、査定させていただきます。

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