作家・作品紹介

ジャン・ジュリアン(Jean Jullien)ーシンプルでユーモラスな視覚言語

以前、水族館で働いていたこともあって、海をテーマにした作品には自然と心を惹かれてしまいます。
そんな私の目に留まったのが、漁師の祖父を持ちブリタニー地方の海岸の町育ち、自身はサーフィンを愛してやまないというジャン・ジュリアンの作品でした。

大阪・関西万博のフランスパビリオンで発表されたインスタレーション《大阪海獣(Osaka Kaiju)》は、彼らしい柔らかい作風が親しみやすさと社会性が重なり合い、思わず引き込まれてしまいました。
船と海洋生物が融合したような愛嬌のある巨大な“海獣”が空間を占め、映像と音響が来場者を包み込む構成によって、海と人間の関係や海洋環境の問題が、物語としてやさしく伝わってきます。
本作は海洋保全に取り組むタラ・オセアン財団の主催によるもので、音響演出は弟で彫刻家・音楽家・映像作家でもあるニコラ・ジュリアンが手がけています。社会的なテーマを扱いながらも、ユーモアと温度を失わない表現からは、ジャン・ジュリアンの創作姿勢が自然と伝わってくるように感じられます。


ジャン・ジュリアン(Jean Jullien)ーシンプルでユーモラスな視覚言語

絵画・ドローイング:日常の断片をすくい取る平面表現

1983年フランス生まれのジャン・ジュリアンは、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズなどで学び、イラストレーションとグラフィックデザインを軸に活動の幅を広げてきました。人物や風景を極限まで単純化したフォルムで描きつつ、そこに物語の余白を残しているところが印象に残ります。

学生時代には、紙に描いた人物を切り抜き、写真の中に配置して物語をつくる実験的な制作にも取り組んでおり、その発想は後の代表的シリーズ「PAPER PEOPLE」へとつながっていきます。
平面作品には強い説明性よりも、記憶や感情の断片をそっと留めるような静けさがあり、見る人それぞれの経験と自然に重なっていく余地が感じられます。

こうした作風は日本での個展やグループ展でも紹介され、都市の風景や日常の感覚とやさしく響き合う表現として受け止められてきました。


ジャン・ジュリアン(Jean Jullien)ーシンプルでユーモラスな視覚言語

立体・インスタレーション:絵の世界が現実空間へ広がる

ジャン・ジュリアンの立体作品やインスタレーションは、平面表現の延長にありながら、鑑賞者が物語の中に入り込むような体験を生み出しています。
GINZA SIXの吹き抜け空間で発表された《The Departure》では、「PAPER PEOPLE」のキャラクターたちが空間を漂うように配置され、絵の中の世界が都市に現れたかのような光景が広がっていました。

また、渋谷の再開発エリアで展開されたNANZUKAのパブリックアートでは、水槽を思わせる構成の立体作品が展示され、海辺の記憶や空想が街の風景と重なり合っていたのが印象的でした。
難解なコンセプトを押し出すのではなく、まず直感的に楽しませ、そこから社会や環境への視点へとゆるやかにつないでいく構成にも、ジャン・ジュリアンらしさが感じられます。

風景に溶け込みながら、ふと足を止めたくなる存在感を放っているところも、この作家ならではの魅力と言えそうです。


ジャン・ジュリアン(Jean Jullien)ーシンプルでユーモラスな視覚言語

版画・絵本・市場評価:親しみやすさとコレクション性の両立

ジャン・ジュリアンは版画やプリント作品も数多く手がけ、ドローイングの魅力をそのままに、より多くの人が作品を手にできる形で発表してきました。展示と連動して制作される限定エディションのシルクスクリーンは、アートと日常の距離を少し近づけてくれる存在にもなっています。

絵本の分野では、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの楽曲を視覚化した『IMAGINE(イマジン)』をはじめ、言葉に頼らずイメージだけでメッセージを伝える作品を発表してきました。子ども向けでありながら、大人が読んでも楽しめる構成からは、視覚表現としての確かさが伝わってきます。

さらに2025年末には、ドラえもんとのコラボレーション展「STRANGE INVENTIONS」が渋谷PARCOで開催され、日本のマンガ・アニメ文化へのオマージュとも言える作品空間が広がりました。日本文化への関心を作品に取り込みながら、表現の幅を広げ続けている姿も印象に残ります。

アートとしての評価も、着実に高まりつつあります。
国内の美術業界ではまだ大きな注目を集めていなかった頃、2022年5月に開催されたSBI Art Auctionで、ジャン・ジュリアンの作品が思いがけず話題となりました。40.0 × 80.0cmのキャンバスに、サーフィンの大波とそれを待ち受けるサーファーを描いた作品が、予想落札価格の70万〜130万円を大きく上回り、買手手数料込みで600万円を超える金額で落札されたのです。この結果は、美術関係者の間でも驚きをもって受け止められました。

現在では当時ほどの記録的な価格が続いているわけではありませんが、オークションに出品されれば安定して買い手がつき、人気作家の一人として定着しつつあります。親しみやすい画面構成と、時代の空気を映し取ったテーマ性が、コレクターの心に自然と響いているのかもしれません。


ジャン・ジュリアン(Jean Jullien)ーシンプルでユーモラスな視覚言語

視覚のやさしさが社会とつながるとき

ジャン・ジュリアンの作品は、強い主張を前面に出すのではなく、軽やかでユーモラス、時には風刺的な語り口で、私たちの生活や社会のあり方をそっと映し出しています。その姿勢は、万博のインスタレーションから街中のパブリックアート、絵本や版画に至るまで、どこか一貫して感じられます。

シンプルであるがゆえに多くの感情と重なり合い、見る人それぞれの経験を映し込む余白を残す視覚言語。
ジャン・ジュリアンは、そのやさしい表現で現代社会と対話を続けている作家であり、これからの活動にも自然と期待が集まっていきそうです。

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