作家・作品紹介

静謐な風景の奥へと導く――写実作家・原雅幸

写実絵画は、ときに「写真みたいに上手い」で終わってしまいます。でも原雅幸の風景は、技巧への感心より先に、こちらの感覚が画面の中へ引き込まれていきます。見ているうちに視線が静かに奥へ運ばれ、時間の流れまでおだやかになるような余韻が残ります。

静謐な風景の奥へと導く――写実作家・原雅幸

記憶を描く写実―大阪から英国の風景へ

原は1956年大阪府生まれの写実作家です。記憶に基づく風景を丹念に描くことで、独自の世界観を築いてきました。制作を支えるのは、「その場を写す」よりも、「風景が自分の中で思い出になってから描く」という姿勢です。
学生時代にフェルメールに触発され、バランスの取れた構図や緻密さへの関心を深めたことは、整った画面設計、いわば「画面に誘う絵画」の土台となっていきました。
30代前半にニューヨークのハマーギャラリーで個展を開いたことで早くから注目され、1998年に渡英。2005年以降はエディンバラを拠点に、英国の風景を中心に制作を続けました。


静謐な風景の奥へと導く――写実作家・原雅幸

遠近法で「入り口」をつくる―視線が吸い込まれる理由

遠近法というと難しく聞こえますが、要は「目線のレール」を画面に作る技術です。原の風景では、道・石垣・川筋・柵のような線が、自然にこちらの視線を奥へ導きます。
羊牧場を描いた作品では、積み上げた岩の垣根が視線を遠方へ運ぶ線として働き、さらに午後の斜光が落とす影までが「奥へ向かう構造」の一部になる――本人もそのように述べています。
鑑賞者が「吸い込まれる」と感じるのは、絵がリアルだからだけではありません。こちらの目の動きが、最初から丁寧に設計されているからです。原の写実は、その場を精密に再現するというより、画面上の導線の上に成立しているのだと思います。
若くして海外でも評価を得た原について、アメリカン・リアリズムの代表的画家アンドリュー・ワイエスが「この若者は素晴らしい目を持っている」と称賛したとも紹介されています。


静謐な風景の奥へと導く――写実作家・原雅幸

静けさの中の時間―光と空気が、記憶を呼び起こす

もう一つの強みは、静止画なのに「時間がある」ことです。雲の動きや水面の揺らぎのような自然現象が、止まっているのに動いて見える。額縁の中に別の時間軸が流れているように感じさせる、と評されます。
この感覚は誰しも身に覚えがあるはずです。夕方の光、雨上がりの匂い、冬の空気。そうした思い出のスイッチは、細部の情報量だけでなく、光と影のバランスや空気の密度によって呼び起こされます。原の作品は既視感(デジャヴ)を喚起し、鑑賞者の記憶と共鳴することを意図しているとされます。だから、見終わった後には「上手い」よりも、「どこかで感じたことがある」という静かな手触りが残るのです。


静謐な風景の奥へと導く――写実作家・原雅幸

ホキ美術館と写実ブーム

原雅幸が語られるとき、ホキ美術館の存在は外せません。ホキ美術館は2010年に写実絵画専門を掲げて開館し、以後コレクションを拡充しながら、現代写実の見え方を更新してきました。原についても、2008年頃から同館創立者・保木将夫の支援を受け、大作を含む多くの作品が収蔵されています。
写実は、派手な主張をしません。けれど原の風景は、見る側の「時間の感覚」に触れてきます。遠近法で奥へ連れていき、光と空気で記憶を呼び起こし、静けさのまま感情を動かす。
現実を写すための写実ではなく、現実の中にある「確かな感覚」を掬い上げるための写実。原雅幸の魅力は、そこにあるのだと思います。

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