2019.12.24
墨の芸術 篠田桃紅
100歳を超えてもなお輝き続ける作家。2015年に出版され、50万部を突破した書籍「103歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い」でその名を知った方も多いのではないでしょうか。今回は今年106歳を迎えた書家、篠田桃紅をご紹介します。
篠田桃紅の生い立ち 日本から世界へ
篠田桃紅は1913年、旧満洲国大連に生まれました。6歳で初めて筆と書に触れ、27歳で初めての個展を東京で開いて以後、着実に実績を積み重ねていきます。1956年には43歳で単身渡米、1958年までアメリカに滞在しました。
そして、世界各国で個展を開催し、篠田桃紅の名は世界に広がっていくことになります。
1966年にビートルズが来日した際には、宿泊したホテルに飾ってあった彼女の作品を見たジョン・レノンが、「これは誰の作品か」と興味を持ったこともありました。今では世界的に有名なボストン美術館などにも篠田桃紅の作品が所蔵されています。
書から線 そして墨へ
当初は、幼いころから学んでいた書の作品を発表していきました。ニューヨークで書道の展覧会を開催したこともあります。
その後、アメリカでの滞在経験から、日本独自の「墨」の魅力を再認識するようになります。さらに無駄なものをすべて省いた「線」による抽象表現に重きを置くような作風へと変化していきます。
2000年以降は、金箔や銀箔、プラチナ箔を背景にする作品が主となっていきます。
背景を煌びやかにすることで、墨そのものの存在感を極限まで引き出そうという気概を感じます。
篠田桃紅の版画作品について
篠田桃紅は版画にも情熱を注いでいます。
通常、版画は300部前後刷りますが、篠田桃紅の版画は50部前後しか刷らないことが多く、非常に貴重です。また、「手彩」といって刷った後に自身の手で色を加えることが多く、その結果、版画といえど一点一点違う作品として楽しみことができます。
和洋どちらの空間に飾っても、スッと溶け込む篠田桃紅作品。
是非、皆様も生活空間の中に、墨の芸術を取り入れてみてはいかがでしょうか。