作家・作品紹介

織田廣喜 〜色彩で綴る夢と感性の画家〜

やわらかな色彩に包まれた街角、物憂げなまなざしを浮かべる赤い帽子の女性、どこか懐かしく、それでいて現実とは少し違う光景。
まるで音楽や詩のように、理屈を超えて感性に語りかけてくるその絵画は、美術に詳しくなくても誰もが自然と惹きつけられてしまう魅力にあふれています。
今回は20世紀日本の洋画界にあって、常に独自の光を放ち続けた「織田廣喜」をご紹介します。


織田廣喜 〜色彩で綴る夢と感性の画家〜

少年時代から芽生えた絵への情熱

1914年、福岡県嘉麻郡(現在の嘉麻市)に生まれた織田廣喜。幼い頃から絵に親しみ、家にあった美術全集でルーベンスやダ・ヴィンチの名画を夢中で模写していたといいます。
「画用紙さえあれば満足だった」と語るように、絵を描くことは彼にとってごく自然な営みでした。
1939年には日本美術学校西洋画科(現・日本美術専門学校)を卒業。卒業後すぐに二科展に入選し、1950年には二科会会員に推挙されるなど、若くしてその才能が高く評価されました。


パリへの憧れと、その地で得た確信

若き日の織田が強く憧れたのは「まだ見ぬパリ」。その夢が実現したのは1960年のことでした。初の海外渡航で見たパリの街並み、空気、人々の表情……すべてが新鮮で、彼の画家としての感性に深い影響を与えました。フランス人の「古き良きものを大切にしながら、常に何かを探し求める姿勢」にも深く感銘を受けたといいます。
現地では個展も開催し、その自由で個性的な画風が「日本人だからこそ描ける絵」として高く評価されました。


織田廣喜 〜色彩で綴る夢と感性の画家〜

織田廣喜の絵画世界 〜自由な色と詩情〜

織田の絵には写実性よりも「心の風景」が描かれています。
「空の色は青くなくてもいい。木の葉は黄色でもいい。描きたくなければ、電信柱なんて消してしまえばいい。」
そう語る織田は、「うそをついた絵のほうが、楽しくていい」と断言し、自由な表現を徹底しました。
現実に縛られず、心のままに色彩や構図を変える。その自由さが、観る人の心を優しく包みます。彼にとってキャンバスは、現実を超えて夢や感情を描く舞台だったのです。


織田廣喜 〜色彩で綴る夢と感性の画家〜

「赤い帽子の女性」〜織田廣喜の象徴〜

織田廣喜を象徴するモチーフといえば、一連の「赤い帽子の女性」。やわらかな筆致と幻想的な色彩で描かれたこの女性像は、多くの画集やポスターでも使用され、誰もが一度は目にしたことがあるはずです。
あこの女性は特定のモデルではなく、織田が心の中で描いた“理想像”。赤い帽子は画面のアクセントであると同時に、記憶に残る印象的なアイコンとして機能しています。


画壇での存在感と人間関係

戦後日本の洋画界において、織田廣喜は中心的な存在でした。中川一政東郷青児林武といった画壇の巨匠たちと親交を持ち、特に東郷の持つ叙情性や装飾性からは多くの影響を受けています。
また後進の育成にも尽力し、2006年には二科会理事長に就任。1995年には日本芸術院賞・恩賜賞を受賞し、2003年にはフランス芸術文化勲章シュヴァリエを授与されるなど、国内外で高い評価を受けました。


美術館で出会う織田廣喜の世界

織田廣喜の作品は、現在もさまざまな美術館で鑑賞することができます。
なかでも福岡県嘉麻市の【織田廣喜美術館】は、彼の名を冠した唯一の公立美術館であり、約200点にのぼる作品を収蔵・展示。代表作のほか、旅先で描かれたスケッチや小作品なども多く、織田の画業を立体的に味わうことができます。

そのほかにも以下の美術館で織田の作品を観ることができます:

福岡県立美術館
東京国立近代美術館
SOMPO美術館(旧・損保ジャパン日本興亜美術館)

織田廣喜の絵がある暮らし

晩年、織田はこう語っています。

「一家に一枚、自分の絵を飾ってもらえたら嬉しい。」

その願いの通り、織田の作品は美術館だけでなく、多くの家庭にも馴染むやさしさと温もりに満ちています。アートに詳しくなくても、誰でも自然に親しめる——そんな不思議な力が、彼の絵には宿っているのです。
心をふわりと軽くしてくれる織田廣喜の世界。美術館でも、あるいは一枚の作品でも、その魅力にぜひ触れてみてください。

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