川端龍子作品の買取相場と価値 – 「会場芸術」の巨匠がもたらす市場価値

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  • 近代日本画
  • 近代日本画の3巨匠

はじめに

日本画の革命児と呼ばれる川端龍子(かわばた りゅうし)。その名を聞いて、豪快な筆致と大胆な構図を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

川端龍子は従来の常識を覆すような壮大な画面構成と鮮烈な彩色を特徴とする作品で、従来の日本画とは異なる独自の芸術世界を築き上げました。「会場芸術」という新しい概念を掲げ、展覧会で観る人を圧倒する作品も次々と生み出しています。

現在では横山大観川合玉堂とともに「近代日本画の3巨匠」と称される川端龍子。本記事では、そんな川端龍子の生涯と作品の魅力、そして作品の価値と買取に関する情報をご紹介します。龍子作品をお持ちの方、売却をご検討の方は、ぜひ最後までお読みください。

鉄仙花
鉄仙花

川端龍子とは?

日本画の革命児として歩んだ道

和歌山市
和歌山市

川端龍子は、1885年和歌山県に誕生します。中学時代に読売新聞社の絵画コンクールで入選したことをきっかけに画家を志し、当初は洋画を学んでいました。1913年に渡米しますが、日本人が描く西洋画は評価されず、ボストン美術館で出会った「平治物語絵巻」に感銘を受けたことで日本画へと転向。

1915年に院展に初入選し、わずか4年で横山大観率いる日本美術院の同人に推挙されるなど、めきめきと頭角を現していきました。

「会場芸術」を掲げ独自の路線を築く

龍子が描いたのは従来の日本画とは異なる、大胆な構図と鮮烈な色彩を特徴とする大型作品でした。当時の主流は小空間に飾る繊細で優美な「床の間芸術」(※)でしたが、龍子の斬新な表現は「粗暴で鑑賞に堪えない」「会場芸術」(※)と批判されます。

この風潮に違和感を覚えた龍子は、1928年に日本美術院同人を辞退。翌年、自ら「青龍社」を設立し、「会場芸術主義」を掲げて独自の道を歩み始めます。代表作「鳴門」では、縦2メートル、横8メートルという巨大な画面に、群青色の海と白い波の鮮烈な対比で水の躍動感を表現し、観る者を驚かせました。

※床の間芸術:個人の家の床の間など小さな空間に飾られることを前提とした、繊細で優美な作風の日本画。
※会場芸術:展覧会場での展示を前提とした大型で豪快な作風の日本画。川端龍子が提唱した概念。

唐辛(扇面)
唐辛(扇面)

栄光と苦難の画家人生

1935年に帝国美術院会員、1937年には帝国芸術院会員に推挙されるなど社会的評価が高まりましたが、1941年にこれらの会員職を辞任します。戦時中に家族を次々と失うという悲しみを経験した龍子は、終戦直前の空襲体験をもとに「爆弾散華」を描くなど、苦難の時代も創作への情熱は衰えませんでした。

戦後の1950年、四国八十八ヵ所巡礼を開始。1959年に文化勲章を受章し、1966年、池上本門寺の天井画「龍」を制作中に80歳で生涯を閉じます。この未完の作品は後に奥村土牛によって画竜点睛(※)され、現在も本堂の天井を飾っています。

※画竜点睛:龍の絵に最後に目を入れて完成させること。転じて、物事の仕上げに重要な点を加えて完成させることを意味する。

川端龍子の作品の魅力や特徴

圧倒的なスケールと大胆な構図

龍子芸術の最大の特徴は、その圧倒的なスケールと大胆な構図にあります。なぜ龍子はこれほど大きな作品にこだわったのでしょうか。それは単に目立つためではなく、鑑賞者に強い感動を与えるための手段だったのです。

代表作「香炉峰」では中国の山の上空を飛ぶ戦闘機を半透明に描き、背景が透けて見える独創的な表現を用いています。洋画から得た空間構成技術と日本の伝統美、豪胆さと繊細さを併せ持つ表現は、他の日本画家には見られない龍子独自のものでした。

鮮やかな色彩と独自の技法

龍子の作品は、鮮烈な色彩表現と岩絵具(※)の独創的な使用法が特徴です。1921年発表の「火生」では、日本神話の英雄ヤマトタケルの赤い体を黄金の炎で包む大胆な表現が用いられました。

1937年制作の「潮騒」(幅14メートル)では、岩に打ち付ける波を輪郭線なしで表現し、海の深さによって変化する青から緑への移り変わりを見事に描き出しています。「草の実」は一見シンプルな金色と黒の対比ですが、実際には奥行きと動きを感じさせる不思議な魅力を持った作品です。

※岩絵具:天然の鉱物を砕いて作られる日本画特有の絵の具。通常の絵の具より粒子が粗く、独特の質感と発色が特徴。

慶鶴
慶鶴

多彩な題材とジャーナリスティックな視点

龍子は多様なモチーフを扱う多作な画家でした。特筆すべきは、時事的な出来事を題材にしたジャーナリスティックな視点です。空襲体験を描いた「爆弾散華」や放火事件を題材にした「金閣炎上」など、社会的事件をいち早く絵画化する姿勢は、日本画とジャーナリズムを融合させた独自の表現といえるでしょう。

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川端龍子作品の買取相場・実績

※買取相場価格は当社のこれまでの買取実績、および、市場相場を加味したご参考額です。実際の査定価格は作品の状態、相場等により変動いたします。

山鳥

山鳥
買取実績価格:18.5万円

秋梢図

秋梢図
買取実績価格:10万円

川端龍子の作品の査定・買取について、まずはお気軽にご相談ください。

川端龍子の作品を高値で売却するポイント

川端龍子の鑑定機関・鑑定人

  • 東美鑑定評価機構 鑑定委員会
    一般財団法人東美鑑定評価機構は、美術品の鑑定による美術品流通の健全化及び文化芸術の振興発展に寄与する公的鑑定機関。

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

贋作について

ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。

ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。

落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。

日本画(額)

状態を良好に保つ為の保管方法

日本画は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう

修復方法

日本画修復の専門店にお願いすることが1番です。下手に自身で手を入れると、返って悪化するケースもあります

共シール

「共(とも)シール」とはいわば、日本画に付帯する作品証明のような物です。多くは表題(絵のタイトル)と作家名が、作家自身の直筆で書かれており、絵画の裏面に貼ってあります。共シールの有無により評価が変わる場合があるので、ご所有の作品にあるか確認してみてください。

掛軸

状態を良好に保つ為の保管方法

掛軸は主に紙や絹に岩絵具で描かれており、湿気やカビにとても弱いです。また直射日光などは酸化の原因になり、劣化します。直射日光を避け、涼しい場所に飾りましょう。また箱にしまったままも湿気やすい為、最低でも年に2回は風を通すようにしましょう。

共箱(ともばこ)

掛軸を収納する箱の事で、蓋の表に表題(作品タイトル)、蓋の内側に作家のサインが作家自身の直筆で記載されてあります。共箱は掛軸の証明書の役割をしており、無い場合は査定額に響いてきます。

書付、識箱・極箱

共箱の分類に書付(かきつけ)と識箱(しきばこ)・極箱(きわめばこ)があります。
書付とは茶道具を中心に各家元が優れた作品に対して銘や家元名を共箱に記します。
識箱・極箱は、作者没後、真贋を証明する為、鑑定の有識者や親族が間違いがないと認定した物に共箱の面や裏に記します。

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川端龍子についての補足情報

川端龍子作品を所蔵する主要美術館

龍子記念館
龍子記念館

川端龍子の芸術に触れてみたいと思われる方も多いのではないでしょうか。龍子の作品は1963年に設立された大田区立龍子記念館に約140点が所蔵されており、隣接するアトリエと旧宅庭園も公開されています。1938年建築のアトリエは国の有形文化財に指定されており、創作の現場を体感できる貴重な場所です。

このほか、東京国立近代美術館には「草炎」などの代表作が、山種美術館には「鳴門」が、足立美術館には「愛染」が所蔵されています。各美術館を巡ることで、龍子芸術の多様な魅力に触れることができるでしょう。

川端龍子と同時代の画家たち

龍子は当初、日本美術院で高く評価されていましたが、独自の「会場芸術」を追求するため横山大観と決別する道を選びました。しかし現在では、横山大観、川合玉堂と並ぶ「近代日本画の3巨匠」として評価されています。その大胆で力強い作風から「昭和の狩野永徳」とも称されることもあり、日本画の歴史において重要な位置を占めています。

近年の川端龍子への再評価

2017年、没後50年を記念して山種美術館で「超ド級の日本画」と題した特別展が開催され、龍子の画家人生を多角的に紹介しました。龍子記念館では現代アートとのコラボレーション企画も実施されるなど、新たな文脈で龍子芸術が再評価されています。

国内外で高い評価を得る川端龍子の作品は美術品市場でも人気があり、その大胆な構図と色彩、時代を先取りした表現は現代の鑑賞者にも新鮮な感動を与え続けています。

まとめ

「会場芸術主義」を掲げ、大胆な線と鮮やかな色彩で日本画の革新を試みた川端龍子。当初は異端児と呼ばれながらも、現在では近代日本画の巨匠として高く評価されています。

龍子の作品は、その斬新な表現技法と大胆な構図、ジャーナリスティックな視点などにより、美術史的にも市場的にも高い価値を持っています。特に大作主義を標榜した豪快な屏風画や、天然の岩絵具を駆使した鮮烈な色彩表現は、他の日本画家には見られない独自のものとして評価されています。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。川端龍子の作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

また、LINEからの査定依頼も受け付けています。(スマホで写真を撮って送るだけ!)詳しくは【LINE査定ページ】をご覧ください。

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