サルバドール・ダリ完全解説|代表作や価値、相場情報まで徹底紹介

  • サルバドール・ダリ

はじめに

チーズのように溶けた時計が印象的な「記憶の固執」――誰もが一度は目にしたことのあるこの作品を残したのが、サルバドール・ダリです。

シュルレアリスムに新たな表現技法をもたらし、写実的な技術と幻想的な世界観を融合させたダリの作品は、絵画にとどまらず、映画やファッションなど多岐にわたる分野で展開されました。現在でも、彼の作品は美術市場で高い評価を受け、多くの注目を集めています。

本記事では、サルバドール・ダリの芸術と作品の魅力についてご紹介します。作品をお持ちの方は、ぜひご参考にしてください。

苦悩と愛深き天才画家 サルバドール・ダリ
バラの頭を持つ女性

サルバドール・ダリとは?

天才芸術家の生涯

サルバドール・ダリは、1904年にスペインのカタルーニャ地方フィゲラスで、裕福な公証人の息子として生まれました。

幼少期から非凡な画才を見せており、ピカソの友人でもあった画家ラモン・ピショットをはじめとする周囲の芸術家たちからその才能を認められていました。

1922年、マドリードの王立サン・フェルナンド美術アカデミーに進学。在学中に詩人のフェデリコ・ガルシア・ロルカや後に共に映画を制作することになる映画監督ルイス・ブニュエルらと親交を深め、後の芸術活動に大きな影響を与える出会いとなります。

パリでの活動とシュルレアリスム

1927年、ダリはパリへと活動の場を移します。そこでパブロ・ピカソ、トリスタン・ツァラ、ポール・エリュアール、ルイ・アラゴン、アンドレ・ブルトンらと出会い、シュルレアリスムの影響を強く受けました。

1929年には人生を大きく変える出会いが訪れます。後に生涯のミューズとなるガラとの出会いです。ガラはダリの創作活動を支え、最大の理解者として彼の人生に欠かせない存在となりました。同年、シュルレアリスム・グループに正式参加し、独自の表現方法で注目を集めましたが、商業的活動や政治的な立場が問題視され、1934年にグループから除名されます。

アメリカ時代と晩年

第二次世界大戦中、ダリはアメリカに渡り、ニューヨーク近代美術館での大回顧展や『TIME』誌の表紙掲載などで一躍注目を浴びました。この時期、ダリは商業的成功を収めるとともに、宗教的テーマを扱った重要作品を数多く制作しました。

1948年にスペインへ帰国し、ポルト・リガトに居を定めて精力的な創作活動を再開。1950年代には《ポルト・リガトの聖母》や《最後の晩餐》などの名作を発表しました。

しかし、1982年に最愛の妻ガラを失い、深い喪失感に襲われたダリはほとんど制作活動を行わなくなります。1989年、84歳でその波乱に満ちた生涯を閉じました。

多彩な創作活動

映画、舞台、ファッションにおける挑戦

ダリの創造性は絵画にとどまりません。映画では、1929年にルイス・ブニュエルと共同制作した短編映画《アンダルシアの犬》が有名です。この作品はシュルレアリスム映画の先駆けとして映画史に名を刻みました。

また、バレエ『バッカナール』(1939年)では、舞台装置や衣装のデザインを手がけ、その独創性で観客を魅了しました。ファッション界では、『VOGUE』誌の表紙デザインやジュエリーの制作を手掛け、アートとファッションの融合を果たしました。

意外なところでは、あの有名なキャンディ「チュッパチャップス」のロゴデザインを手がけたことでも知られています。このように、ダリの創造性はジャンルを超えて広がり、時代を超えて愛されています。

チュッパチャプス

【サルバドール・ダリの作品の魅力や特徴】

代表作品とその世界観

《記憶の固執》(1931年)

苦悩と愛深き天才画家 サルバドール・ダリ

溶けた時計が象徴的なこの作品は、夢と現実が交錯するシュルレアリスムの代表作です。時間の概念を揺るがすような不条理な描写が、観る者の想像力を掻き立てます。

《ナルシスの変貌》(1937年)

ナルシスの変貌

出典:mono-art.jp

ギリシャ神話のナルシスをテーマに描いた作品。自己愛の象徴が水仙の花へと変化する様子を、独自の解釈で描き、深い象徴性を持つ作品として評価されています。

《茹でた隠元豆のある柔らかい構造》(1936年)

茹でた隠元豆のある柔らかい構造

出典:mono-art.jp

スペイン内戦を予言したとされる作品。当時の不穏な社会情勢を反映し、ダリ特有の幻想的かつ現実的な不安感が描かれています。

《最後の晩餐》(1955年)

最後の晩餐

出典:mono-art.jp

レオナルド・ダ・ヴィンチの同名作品を基に再構築した本作。幾何学的な正確さと神秘的な表現が融合し、晩年の重要な宗教画として高く評価されています。

特徴的な表現技法と作風

ダリの作品を見ていると、一つの形が別のものにも見えてくることに気づいたことはありませんか?これは、ダリが確立した独自の表現技法「偏執狂的批判的方法」によるものなのです。

複数のイメージを同時に描く手法により、1つの形が異なるものとしても見える二重イメージが生まれます。

例えば、《水面に象を映す白鳥》では、水面に浮かぶ白鳥の影が象の姿に見えるよう描かれており、ダリ特有の幻想的な世界観を感じさせます。このような技法により、ダリの作品は現実と非現実が交錯するユニークな魅力を放っています。

水面に象を映す白鳥
水面に象を映す白鳥

出典:Artpedia

芸術的背景と影響を受けた画家たち

ダリの写実的な描写力は、どのように培われたのでしょうか?実は、彼は多くの芸術様式や画家たちから影響を受けていたのです。

初期のダリは、印象派や点描派、キュビスムなど、さまざまな芸術様式の影響を受けていました。特に若い頃はキュビスムに傾倒し、20歳の時にはスペインで初めてキュビスムの手法を取り入れた作品を発表し、注目を集めました。

また、ダリはバロック期の巨匠ヨハネス・フェルメールを高く評価し、その影響も受けています。写実的な描写技術の基礎は、こうした古典絵画の研究によって培われたものでした。

サルバドール・ダリ作品の買取相場・市場情報

オークション

市場での流通状況

ダリの油彩作品は1億円以上の価格が付くこともありますが、現在は市場に出回ることはほとんどなく、入手は非常に困難となっています。実際にオークションでは、「Portrait de Paul Eluard」が約24億円、「Printenps nécrophilique」が約18億円で落札されるなど、その価値は非常に高いものとなっています。

版画作品の相場

版画作品は、銅版(エッチングやアクアチントなど)やリトグラフで制作されています。状態や内容により価格に差があり、一部の人気作品を除いて、数万円台から10万円以上と幅広い価格帯となっています。特殊な作品、例えば動物の皮に摺られた作品などは、より高い評価となる傾向にあります。人気作品ともなれば、オークションなどで100万円を超える価格を付けられることもあります。

ブロンズ作品の相場

ブロンズ作品は、数十万円台から100万円以上までと様々です。特にダリらしい特徴が表れている作品や、サイズの大きな作品は高い評価を受けています。

ダリ作品の査定・買取について、まずはお気軽にご相談ください。

サルバドール・ダリの作品を高値で売却するポイント

来歴や付帯品・保証書

来歴や付帯品:購入先の証明や美術館に貸出、図録に掲載された作品等は鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。
保証書:購入時に保証書が付帯する作品もあるので大切に保管しましょう。

贋作について

ここ数十年のインターネットや化学技術の向上により、著名作家の贋作が多数出回っています。

ネットオークションでは全くの素人を装い、親のコレクションや資産家所蔵品等の名目で出品し、ノークレームノーリターンの条件での出品が見受けられます。

落札者は知識がないがために落札後のトラブルの話をよく聞きます。お手持ちの作品について「真贋が気になる」「どの様に売却をすすめるのがよいか」等、お困りごとがあればご相談のみでも承っております。

版画

共通事項(状態を良好に保つ為の保管方法)

版画には有名画家が直接携わり監修した作品も多くあります。主に版画作品下部に作家直筆サインとエディション(何部発行した何番目の作品であるか)が記載されています。

主に紙に刷られており、湿気や乾燥に弱いです。また直射日光が長期間当たると色飛びの原因になります。掛ける場所・保管場所には十分注意しましょう。

リトグラフ

石版画とも言われ、ヨーロッパの歴史では古くから用いられてきました。日本でも昭和から活発に使用され、各地にリトグラフ専門の工房が存在します。

サルバドール・ダリについての補足情報

ダリ劇場美術館
ダリ劇場美術館

世界のダリ・コレクション

スペインのフィゲラスにある「ダリ劇場美術館」は、ダリの作品を所蔵する世界有数の美術館です。収蔵点数は1万点以上と非常に多く、中に入ればシュルレアリスム・ワールドに迷い込んだかのような不可思議な感覚を味わうことができます。

日本では、諸橋近代美術館がアジアで唯一ダリの作品を常設展示している美術館として知られています。

芸術家としての逸話

ダリには数々の興味深いエピソードが残されています。例えば、講演会で潜水服を着て登壇したものの、酸素供給がうまくいかずに死にかけたことがありました。

また、象に乗って凱旋門を訪れたり、頭にフランスパンを巻きつけて記者会見に現れたり、奇抜なパフォーマンスで度々話題を呼びました。

しかし、ごく親しい人々の前では繊細な配慮ができる穏やかな一面も持ち合わせていたといいます。これらの型破りな言動は、芸術家としての自己表現の一つだったのかもしれません。

まとめ

サルバドール・ダリは、シュルレアリスムを代表する芸術家として、絵画のみならず、映画やファッションなど多岐にわたる分野で独創的な活動を展開しました。その作品は、現代でも多くの人々に感動を与え続けています。

ダリの作品をお持ちの方は、その価値を再確認し、ぜひこの稀代の天才芸術家の世界を堪能してください。

当社では、あなたの大切な作品の価値を最大限に引き出すべく、丁寧な査定と適切なアドバイスを提供いたします。サルバドール・ダリの作品の買取をご検討される際は、ぜひお問い合わせください。

サルバドール・ダリの作品の買取をご検討される際はこちらをご覧下さい。

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