作家・作品紹介

“今”を描く若きペインター井田幸昌 ── 一瞬をとらえるまなざし

“今”を描く若きペインター井田幸昌 ── 一瞬をとらえるまなざし

今この瞬間の輝きを鋭く捉え、人の内面に秘められた感情や存在の深さを描き出す――。厚く塗り重ねられた絵の具と力強い筆致によって、静かな情熱をたたえた世界を生み出し、見る者の心に深い余韻を残します。
今回は、「一期一会」の精神を胸に、日々のかけがえのない瞬間を見つめ、自らと向き合い続ける画家、井田幸昌をご紹介します。


“今”を描く若きペインター井田幸昌 ── 一瞬をとらえるまなざし

創作に囲まれた幼少期と芸術への芽生え

井田幸昌は、鳥取県彫刻家の父・井田勝己の下、幼少期から創作環境に囲まれて育ち、父の友人である米国彫刻家ロバート・シンドルフをメンターに多くを吸収しました。高校を卒業後、一度は石材業界へ就職しますが、諦めきれなかった創作への情熱から再挑戦。東京藝術大学への進学を目指すようになります。四度目の挑戦で念願の合格を果たし、2016年に学部を卒業、2019年に大学院も修了。ここから、彼の名が広がっていくきっかけがいくつも生まれていきました。

在学中の2016年には、「VOCA展」に推薦出品され、現代芸術振興財団のCAF賞で「審査員特別賞(名和晃平賞)」を受賞。翌年には、レオナルド・ディカプリオ財団主催のチャリティーオークションに最年少で参加するなど、早くから国際的な注目を集め始めました。
2021年12月には、実業家・前澤友作氏が国際宇宙ステーション(ISS)に井田の作品を持ち込んだことが報じられ、大きな話題となります。その後も、スペインのピカソ生誕地ミュージアムでは、アジア人として初の個展「Yukimasa Ida visits Pablo Picasso」を開催。さらに、国内初の美術館巡回展「Panta Rhei|パンタ・レイ」が、2023年7月22日に地元・米子市美術館でスタートし、京都市京セラ美術館へと巡回するなど、幅広い層の注目を集めました。
若くしてこれだけ多方面で活躍する姿は、同世代の作家の中でもひときわ印象的です。


“今”を描く若きペインター井田幸昌 ── 一瞬をとらえるまなざし

インドの衝撃から生まれた「一期一会」

彼の作品づくりの核には、「一期一会」という言葉があります。インドを旅した際に、街で見た生と死の光景に強い衝撃を受け、「今日この瞬間を描くことの意味」に気づかされたといいます。その体験が制作の姿勢にも深く影響を与えているようです。

「The End of Today」シリーズでは、その日出会った無名の人々や風景をその日のうちに描き上げる着想型。まさに「一期一会」を体現する試みで、儚くも鮮烈な画面が特徴です。ふとした場面を切り取っているのに、どこか静かに胸に迫ってくるような、そんな余韻を感じさせます。

また、「Portrait」シリーズでは、アンディ・ウォーホルジャン=ミシェル・バスキア等の自体のアイコンとなる有名人物や市井の人々、そして自分自身の姿も描かれています。その作品からは、ただ似せるだけの肖像画ではなく、その人の奥にある感情や気配をすくいとろうとしているように見えます。荒々しくも繊細な筆致や、厚く塗り重ねられた絵の具の質感に、画面の奥から何かが滲み出てくるような感覚があり、見る側の想像力を刺激します。

井田は自分自身の顔を描く姿勢を「人生を通じて向き合う問い」として語っており、自身をモチーフにした絵を継続して描き続けることで、日々内面と向き合う制作スタイルは、まるで日記を書くようでもあり、変化し続ける内面を見つめようとする静かな意志が感じられます。

パブロ・ルイス・ピカソ生誕地ミュージアムでの展覧会にて発表されたピカソへのオマージュ作品からもわかるように、井田はピカソから大きなインスピレーションを受けているように見受けられます。ただし、それは単なる引用や模倣ではなく、むしろ作品そのものというよりも、表現者としての“生き方”に深く共鳴しています。
ピカソの挑戦的で多様な表現スタイルに、井田は自身の創作姿勢や制作の幅広さを重ねているようです。そしてそれらを現代的な構成や視点と融合させながら、自分のスタイルとして丁寧に咀嚼しているようにも感じられます。古典と現代、感性と構成――その両立が、彼の作品に独自の魅力を与えているのかもしれません。


“今”を描く若きペインター井田幸昌 ── 一瞬をとらえるまなざし

アートを社会とつなぐ活動の広がり

活動の場はアートの世界だけにとどまりません。ファッションECのZOZOVILLAではオープニングビジュアルを手がけ、クリスチャン・ディオールの「Lady Art」プロジェクトにも参加。2025年にはディズニーとの公式コラボ展示も開催され、アートと社会の接点を広げる取り組みも注目されています。アートがもっと身近に感じられるきっかけとして、こうした展開に惹かれる方も多いのではないでしょうか。

井田幸昌の魅力は、単に「若くして成功した画家」という言葉では言い表せないものがあります。彼の作品には、自分自身と向き合い続ける姿勢があり、人間の存在そのものを描こうとする深い眼差しがあります。それが、作品の静けさや重みとして画面から伝わってくるのかもしれません。

アートに詳しくなくても、彼の絵を見ていると、何かに見つめ返されているような、不思議な感覚を覚えることがあります。忙しい日常の中で、ふと立ち止まり、自分自身の心に目を向けるきっかけをくれる――井田幸昌の作品には、そんな力があるように感じられます。

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