作家・作品紹介

長谷川潾二郎 孤高で寡作 -伝説の画家-

長谷川潾二郎 孤高で寡作 -伝説の画家-

いまにも寝息が聞こえそうに気持ちよく横になって眠っているこの猫
●名前:タロー
●出生地:東京都世田谷区上北沢
●本籍地:エジプト国、デア・エル、バハリ神殿、スフィンクス通り2-1-11
●職業:睡眠研究株式会社社長、万国なまけもの協会日本支部名誉顧問
●趣味:食事
●体重:ずっしり重い
●身長:不明 時に変化す
という歴とした履歴書の持ち主。画家 長谷川潾二郎(はせがわりんじろう)の飼い猫です。
今回は、完成まで6年を費やしたというこの作品のエピソードをご紹介したいと思います。


長谷川潾二郎 孤高で寡作 -伝説の画家-

「猫」 愛猫 タロー

9月のある日、普段はアトリエにいれていなかった飼い猫のタローが、アトリエで寝そべっているところを見て潾二郎は急にその姿を描きたくなったそうです。
机の上に臙脂色の布を敷いてその上に寝ているタローをそっと乗せ、6号のキャンバスで描きはじめます。毎日同じポーズをとってくれるタローは優秀なモデルでした。ところが、数日描き一先ず休んで一か月後に続きを描こうとしたところ、タローは同じポーズをせずに頭を引っ込めて丸くなってしまいます。10月下旬になったために気温が下がり、猫特有の寒くなると丸まったポーズになってしまうのです。
9月の気候がこの作品のポーズをとらせるという事が判りますが、対象が目の前に同じ状態でないと描かない潾二郎は、一年休んで翌年9月に続きを描きはじめ、9割がた仕上げました。しかし、その時タローにはまだ髭がありませんでした。
その後タローは病気になり、同じポーズをとらなくなってしまいます。
ある画商がこの絵を気に入り譲って欲しいと頼んだそうですが、「まだ髭を描いてないから渡せません」と言い、画商が「髭を描いて欲しい」とお願いすると、「猫が大人しく座ってくれないと描けない」と言ってタローが元気になって同じポーズをするのを待ちます。
たかが髭だけのためにと思いますが、潾二郎とはそのような画家なのです。
しかし、タローは病気の上、老化もすすみ同じポーズができずに完成しないまま死んでしまいます。潾二郎は仕方なく空想でタローの髭を描きますが、それは簡単な申し訳のような髭でした。そして、なぜか片方の髭はありませんでした。
画商の元にこの絵が渡ったのは6年後だったそうです。画商は、「猫が幸福なのか、描いた長谷川さんが幸福なのか、見ている私が幸福なのか分からないが、この絵はやっぱり幸福の絵なのではあるまいか。少なくともこの絵を見て不幸にはならない。」と語っています。
私もこの作品「猫」を見ていると優しい気持ちになり、ふっと目元が緩んでしまいます。


長谷川潾二郎 孤高で寡作 -伝説の画家-

長谷川潾二郎の世界観

長谷川潾二郎は、戦前から戦後にかけて制作を続けた画家です。画壇とはほとんど交流せず、一部の支持者を除いては、知る人も少ない画家でした。
函館に生まれ、父はジャーナリスト、兄は林不忘(はやしふぼう)のペンネームで「丹下左膳」等の流行作家、弟たちも文学者で「長谷川四兄弟」として知られていました。
単身上京し、川端画学校に通いますが数か月で退学。独学で洋画を描き続けますが、画家としてより先に兄の影響で探偵小説家“地味井平造(じみいへいぞう)”として世に出て江戸川乱歩に高い評価を受けます。しかし長くは続かず小説家としては姿を消しました。
画家としては、対象物が目の前に同じ状態でないと描かない画家のため、律義・潔癖・遅筆などと言われる潾二郎は、「それは、実物によって生まれる内部の感動を描くのが目的ですから、実物を描いている、とは言えません。つまり私が描いているのは実物ではありません。しかし、それは実物なしでは生まれない世界です。」と語っています。


a長谷川潾二郎 孤高で寡作 -伝説の画家-

写実的でありつつも幻想的な独特の画風は、活動当時から一部の批評家や画商の間で高く評価されていました。
潾二郎が描き出す何気ない日常に潜む独特なこだわりの世界感は、今でも私たちの心を掴んで離しません。

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