2024.02.06
岐阜が生んだ日本画家 加藤東一
つい先日、展示会の関係で岐阜県に出張に行ってまいりました。
岐阜県と言えば、皆さんご存じの織田信長らの戦国大名が文化の発展に寄与した事もあり、美術史における安土・桃山時代は最も豪壮で華麗な文化が花開きました。
また美濃和紙が有名であり、商売の街 名古屋市が隣と言うこともあり、昔から掛軸や日本画を中心に多くの作家を輩出してきました。
代表的な作家には前田青邨、守屋多々志、篠田桃紅、熊谷守一、等がいます。
その中でも岐阜県民に最も愛された、日本画家 加藤東一を今回はご紹介いたします。
岐阜の夏の風物詩「鵜飼」
加藤東一は、1916 年に岐阜県で誕生しました。兄は、同じく日本画家の加藤栄三です。東一の産まれた岐阜県には日本屈指の清流として有名な長良川が流れています。長良川中流域の水は「名水100選」に選ばれ、1300 年を超えて継いできた「鵜飼」が今もなお伝統を守り、行われる場所でもあります。鵜飼とは闇に包まれた川で篝火(かがりび)に驚いた川魚を水鳥の「鵜」を手縄で操り、巧みに捕える伝統川漁です。闇の中、赤々と燃える篝火を川面に映した美しさは織田信長がおもてなしとして”魅せる”よう命じたほどでした。
“魅せる鵜飼”を描く
東一は兄に続き関東に拠点を移し日本画制作を始めますが、代表的な作品と呼ばれる作品群はどれも郷土愛に溢れる作品ばかりです。濃紺の岩絵具を使ったマチエールで深い藍色の金華山を表現し、その中で輝く橙や緋色など篝火を美しく描きました。東一といえば「鵜飼」と連想できるほどの代表的な題材と言われ、 「鵜飼」を題材とした「総がらみ」や「漁火」などをはじめ作品制作を精力的に取り組み、日展における受賞を複数回うけ、内閣総理大臣賞や白寿賞、日本芸術院賞の受賞といった輝かしい記録も残しました。その功績が認められ、平成5 年に完成させた金閣寺大書院障壁画は伊勢丹美術館で「加藤東一金閣寺大書院障壁画展」が開催され代表作の一つになり、同7年には文化功労者になるなど岐阜県を代表する名作家として活躍をしました。
加藤栄三・東一記念館
岐阜市の中央、金華山のふもとに広がるこの岐阜公園は、戦国時代の岐阜城主であった斎藤道三公や織田信長公の居館があったとされる場所です。この公園内にある加藤栄三・東一記念美術館は、日本画家の兄である加藤栄三と共に平成3年に開館しました。展示されている作品点数こそ少ないですが、大迫力の作品や岐阜の風景を愉しむことができますよ。