2021.04.20
故郷でなく日本で先に評価された画家 カシニョール
今でも日本で人気、多くの人が魅了されるカシニョール。帽子を被った特徴的な女性の絵をどこかで見たことが有るという方も多いのではないでしょうか?実はこのカシニョール、世界的にも有名なフランスの画家さんにも関わらず人気に火がついたのは日本からなんです。今回は、そんなカシニョールのご紹介をさせていただきます。
カシニョールの生い立ち
世界の具象絵画の代表的な作家であるカシニョールは、1935年にフランスのパリで生まれました。生家はオートクチュール(高級衣装店)を営んでいたので、幼少期から多くの女性モデルに囲まれていました。その環境が、生涯において女性を描くという彼の画業の根幹を育んだといいます。シャガール、マティス、ビュッフェやピカソといった多くの著名な芸術家を支えた天才摺師と称されたシャルル・ソルリエは、カシニョールは13歳という幼さにして既に女性を芸術の対象と認識していたと評しています。とはいえ、1960年代初め頃の彼はまだ駆け出しの画家にしか過ぎませんでした。しかし、1964年に彼のアトリエを訪れた日本人画商がそんなカシニョールの才能を見出しました。その画商によって日本で広められたカシニョールは大きな人気となり、アメリカを経由し、そしてフランス本国においても存在を知らしめることになったのです。
カシニョール独自の女性像
いくどとなくモデルとなり、カシニョールの良き理解者の1人であった黒柳徹子さんは、「多くの画家が活躍している中にあって、どんなに多くの絵があろうとも、その中にカシニョールの絵があれば、それは専門家でなくともすぐに見つけ出すことが出来る」と述べています。何気ない日常風景の中で佇み、優雅で甘美、スマートな気品を感じさせ、その瞳や表情に憂いを帯びている…そんな女性像に多くの人が魅了されました。日本でまず成功したことは先に述べましたが、そこには古くから美人画の伝統を持ち、それを求める土壌が日本に根付いていたことも1つの要因かもしれませんね。そんなことをカシニョールのリトグラフを見ながら思いました。