作家・作品紹介

日本の伝統と西洋文化の融合 長谷川潔

計算された構図と繊細なモチーフに白黒で描かれた美しい絵画。この静謐な絵画はいったいどうやって描かれているのでしょうか。実はこの絵画は版画の技法の一つである“銅版画”で制作されています。今回は日本のみならず海外でも大きな功績をのこした銅版画家・長谷川潔を作品と共にご紹介します。

日本の伝統と西洋文化の融合 長谷川潔

長谷川潔の代名詞でもあるマニエル・ノワール

小・中学生の頃、誰もが一度は図画工作や美術の授業で版画制作の体験したことがあるかと思います。木を彫り墨などを塗布し、紙に刷る木版画や、銅板を削り色をつけ刷る銅版画などを学んだことがあるのではないでしょうか。

長谷川潔はその銅版画の一種で“マニエール・ノワール”と言う技法を用いて作品を制作しています。実はこの技法の起源は古く、17世紀半ば頃からイギリスで肖像画家制作技法として広まりました。当時は絵画の複製に盛んに用いられましたが、後にリトグラフや写真製版の登場とともに急速に衰退し、ヨーロッパでは忘れ去られていました。

長谷川は中学卒業後、葵橋洋画研究所で黒田清輝から素描を、本郷洋画研究所で岡田三郎助藤島武二から油彩を学びました。また、バーナード・リーチからはエッチング技法の指導を受け、ついに1918年に渡仏して本格的にエッチングを学びます。
そしてヨーロッパで忘れ去られてしまっていた、銅版画技法“マニエール・ノワール”の復興を行うのです。長谷川はこの過去のものとなった技法に着目し、上下左右、斜めに無数の細い線を刻んで下地を作り、黒いインクで刷るという独自の方法で制作し、西洋の古典技法であるこのメゾチントを現代の芸術表現のひとつとして復活させました。その後、密度の高い微細な点刻をほどこすことで、漆黒から浮かび上がる深遠な表現世界を創り出しました。

 

日本の伝統と西洋文化の融合 長谷川潔

7年もの歳月をかけ完成させた『竹取物語』

1934年刊行のフランス語に訳された『竹取物語』は、長谷川が最も制作に時間をかけ、各章の書き出しの文字図案、用紙や活字、刷り、製本などにも注力した完成度の高い挿絵本です。フランス語への翻訳はパリの日本大使館勤務だった外交官・本野盛一が行い、仏訳の物語と長谷川潔によるエングレーヴィングの挿絵が共鳴し、日本の伝統と西洋文化の融合が見られる本となっています。まさに「リーヴルダール」と呼ぶにふさわしい、近代挿絵本の傑作といえるでしょう。

1918年27歳でフランスに渡り、日本に戻る事なくパリを拠点に活動を続け、1935年にフランスのレジオン・ドヌール勲章を受章、さらに1966年にはフランスの文化勲章、1967年にはパリ市金賞牌を受賞。1972年にはフランス国立貨幣賞牌鋳造局が長谷川潔の肖像メダルを発行。日本人画家としては、葛飾北斎と藤田嗣治に続いて3人目という快挙でした。終生一度も故国の土を踏むことなくパリで没した20世紀を代表する銅版画の巨匠、長谷川潔。日本の版画家として国際的な評価を受けた画家の一人であり、その後の日本の画家たちにも多大な影響を与えました。

そして2024年3月、長谷川の生まれ故郷である横浜で開催される“第8回横浜トリエンナーレ”に作品展示がされることがこの度発表されました。ぜひこの機会に長谷川潔の作品をお楽しみいただければと思います。

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